2010年12月2日木曜日

最近買ったCD(坂本龍一+大貫妙子とソラブジ)

17-8年ほど前、学生の時に友人に教えてもらった作曲家の中にSorabjiソラブジというべらぼうな曲をいっぱい書いている人がいます。
とにかく響きが複雑に折り重なって分厚くそれが独特の湿度と香りを感じさせる作風で、演奏は大抵極めて難しくピアノソロなのに6段譜になっていたりするものもある上に、A3で200とか300ページを費やす作品も珍しくなく、その演奏時間も4時間とか7時間とかかかってしまう。まあ濃密な感触を好むピアノ通向けの作曲家であります。

このたびはそのソラブジが書いた「100の超絶技巧練習曲」という400ページ・演奏7時間という代物の第3弾で44-62番が収まっているCDです。多少クラシックのピアノに触っている人なら超絶・・ときいてリストの12曲の練習曲を思い浮かべるかも知れませんが、この「100の・・」はリストのそれにしばしば見られるような物語性はほとんど無く、和音、多声、音階、アルペジオ・・といったさまざまな技法をつかってソラブジの音世界を顕す、標本群のような、あるいは織物見本のような曲集です。しかし、無味で機械的な練習曲群かというとそれも見当違いで、一曲一曲の響きにはそれぞれ色彩感や芳香に満ちた音の手触りがあり、聴くうちにその音の湯の中にずぶずぶ浸ってしまいます。
演奏も見事な切れ味の良いもので、聴覚を通してすぱすぱと色や匂いの世界を切り開いてくれます。
うーん、続編が楽しみですが、完結するのはあとCD3-4枚を費やす筈で(番号が増えるほど演奏時間が長くなる傾向があるため)気長に待つことにします。

もう一枚は坂本龍一のピアノで大貫妙子が歌うという、その名も「UTAU」。
大貫さんの歌はちょくちょく聴いていたのですが、1990年を過ぎたあたりからの作品は、高めの音で地の声から鼻に抜けて裏声に移る歌い方が多く、その際に「べろべろっ」とぬめるような質感があって余り好きにはなれず、聴くのはもっぱらその頃までの作品ばかりでした。(えらそうで済みません)
そういうわけで、このCDが出たときも「ふう〜ん」くらいに思っていたのです。ところが後日ネットサーフしていてたまたまどんなものか試聴してみたところ,,鳴り出して数秒で息を飲み、続いてもう何曲か試聴してそれから1分後には注文してしまいました。
古い録音の素の声でもなく、近年のべろんとした鼻の声でもなく、じつに手触りに富んだ力のある歌が聴こえる。伴奏のピアノも絶妙なニュアンスが素晴らしい。
二人の才能が互いに磨きあって新しい地平を見いだした、そんな感じがします。

このCDのジャケがそうであるように、シンプルでモノクロームな質感の曲が収められています。しかしこのモノクロームは「墨に五彩あり」の言葉通りの能弁さを感じます。

これらに限らず、素晴らしい器楽奏者、歌い手、、好みの演奏に出会えるたび、いつも「音楽はすごいな〜」としみじみ思います。

音楽が好きでほんとうに良かった!

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